"記憶・学習から多様な疾患制御まで"
KIFsの分子細胞生物学的研究
神経細胞はしばしば1メートルを越える長い軸索突起を持っていますが、この突起内にはタンパク質合成装置がありません。
このため、シナプス領域で必要とされる蛋白質群は細胞体で合成された後、様々な膜器官やタンパク質複合体の形で軸索内輸送されます。
この種の細胞内輸送は神経細胞の機能や形態形成のみならず、細胞生物学的な見地からも基礎的かつ重要な現象です。私たちは微小管依存性の軸索輸送に関与するKIFs
のクローニングを行い、ヒト及びマウスにおいて最終的に45個のkif遺伝子群を見出しました。
細胞内物質輸送は、私たちの体を作っている神経細胞を初めとしたあらゆる細胞で、細胞の形作りと働きの要となっています。私たちは急速凍結電子顕微鏡法とビデオ顕微鏡
による観察を基に、この機構を担う、微小管をレールとするモーター分子群KIFsを同定し分子細胞生物学的、生物物理学的、構造生物学的及び分子遺伝学的手法
を駆使した解析により、物質輸送の機構を研究してきました。
また、特定KIF遺伝子を欠失したマウスや過剰に発現するマウスを作り個体レベルでのKIFsの働きを解析すると驚くべき生命の謎が数多く明らかにされてきたのです。
記憶・学習等の高次機能、脳の回路網形成、活動依存性の神経細胞の生死、体の左右の決定、腫瘍・癌の抑制、腸神経の発生等、予期せぬ重要な生命現象を司っている
ことが明らかになりました。また、大変巧妙な分子機械としての作動機構も明らかになりました。
ところが、KIFs研究にはいまだ謎の部分がほとんどで、解明すべき謎が数多く残されています。
廣川研はこれら多くの謎を解明し、ありとあらゆる生命現象に迫ることを目標としています。
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SUB GROUPS
Cargo Binding/Releasing
モーター分子KIFsは非常に多彩な積荷(カーゴ; cargo)を輸送しています。また、数あるカーゴから自分の運ぶべきカーゴを選別して結合し、 目的地に到着するとカーゴとの結合を脱離して放つことによって細胞内物質輸送を制御しています。
Cell Biology
マウスから海馬等を取り出し、神経細胞を培養することで細胞レベルにおけるモーター分子KIFsの機能を探ります。 様々な処置を施した神経細胞を顕微鏡で観察することが可能です。生きた細胞を経時的に観察することで突起伸長の異常などが解明されました。
Structure
生物物理学、クライオ電子顕微鏡学、X線結晶解析を駆使することによって、 モーター分子KIFsの構造(Structure)を解析します。 積荷(カーゴ)を輸送するときの構造変化の過程を解くことで、どのようにKIFsがカーゴを輸送しているかが分かります。
Mouse / Behavior
特定のKIF遺伝子を欠失したマウスや過剰に発現するマウスを作り、行動実験(behavioral experiment)を駆使することによって個体レベルでのモーター分子KIFsの機能が明らかになります。